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アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)

すっかり内容を忘れかけていたので再読。昼と夜/眠りと覚醒/テレビのこちらと向こう側/こちらの世界とアルファヴィルのように、世界に存在する二面性を様々な視点から描いており、それらの世界は容易に行き来できてしまうということが描かれている。エリはこちらの世界で記号化されて心に暗部を抱え、夜の間にテレビの向こうの世界に行ってしまい、同じ世界に生きる白川はこちらの世界で中国人の少女を殴る。少女を管理する組織はこちらの世界に手を伸ばし、マリはあちらの世界に行ってしまった姉を取り戻すために、記号化されていない彼女に──肌に触れることが出来る今ここにいる彼女に──向き合おうとする。高橋も、裁判を経てあちらの世界を見つめようとしている。互いの世界はすぐそばに、薄皮一枚を隔てたところに存在している。

読んでいて思うのは、対象が個であっても世界あるいは社会といったより大きなものであっても、それらには明と暗があり、流れがあり、循環があり、そして互いはどうしようもなく不可分であるということだ。これまで個を描き続けてきた村上春樹の描く対象がより拡がったところで、彼の作風にそれほど大きな変化は見られない。ただ、やっぱりどうしても習作という印象を拭えない。これだけ地味な作品なのにぐいぐい読ませるリーダビリティにはやっぱり驚くけれど、物語としての力強さは無い。