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Do you believe in the magic of make-believe ?

朝起きていつもの通りコーヒーを淹れて勉強し、知り合いの仕事を少々手伝っていると夕方になった。近所のカフェで少々本を読んでから夕飯を作り、TSUTAYA で借りてきた『幸せへのキセキ』(変な邦題)を観た。とても良い映画だった。シンプルなストーリーなのだけど、監督が描きたいものが明確でそれを十全に表現出来ているように思える。光を上手く使った映像とセンスの良い音楽は、繊細さや生き生きとした様子を描き出して甘酸っぱいストーリーを引き立て、要所では再生の高揚感を演出している。脚本もとても良い。母親を失い精神的に荒れている息子を横目に、主人公である父親は動物園の再生に没頭する。映画を観ている人は何故息子が問題を抱えているのに話し合わないのかと思うのだけど、やがて彼自身も息子の心を慮っていられるほどの余裕は無いのだということが分かる。(意識的ではないにせよ)父親に傷つけられた息子は、同じように無意識に彼に好意を寄せる少女を傷つけてしまう。息子と少女の関係は、父親と息子の関係の相似形として描かれる。けれど「20 秒の勇気を持とう」「冒険をしよう」という前向きなメッセージと共に、動物園の再生を通じて彼らは少しずつ変化してゆく。太陽の無い死後の世界ばかり描いていた息子はやがて太陽が現れるのを喜ぶ少年となり、妻との思い出のカフェに近づくことすら出来なかった夫は、彼女が好きだった赤い凧をあげて笑顔を見せるようになる。動物園のスタッフや動物たちを交えてこの過程が描かれるわけだけど、その描写がとても丁寧で胸に迫る。終盤、彼らが生き生きと躍動するその様子は例えようがないほど美しく魅力的で高揚感に溢れていたし、本当に素晴らしい作品だった。

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)

ブックオフでお風呂で読むための軽い読み物を探していたところ、なにやらドラマ化で話題になっていたのを思い出して買ってみた。書店でも妙に目立っていたし気になってはいたのだ。いわゆるライトノベルに属する作品だと思うのだけど、そうは思えないほどファン層が広いというか、売れているなぁと感じていたのだけど読んでみて納得。全方位的に「売れる」要素を盛り込んだ小説だった。まずヒロイン?である栞子の造形がズルい。超が付くほどの本好きであり、古書マニアであり、さらには美人である。かと思えば対人関係は滅法苦手で控えめな少女である一方、本の話になると爛々と目を輝かせて語り出し、推理となれば凜とした雰囲気を纏い明晰な頭脳を披露する。なんだコレ超人なのか。もう一度言うけどこれはひとりの少女の造形である。そしてこの小説はこの少女の魅力を余すところなく伝える点に主眼を置いている。勿論お話自体も悪くて、リーダビリティは高いし丁寧に伏線を張った話運びには好感が持てる。けれどやっぱり主題はこの少女なのだ。それ以外の要素はまるで消毒殺菌されたかのごとく無味無臭で不快感が無く、読者は少女の魅力を堪能出来る。そしてひとりの少女の魅力だけであらゆる方面にファンをつくることが出来るように造形されているところがポイントなのだ。と僕は理解した。オタク男子にも一般女性にもこの少女のどこかしらに魅力を見出せるようになっている。うーん何かこれは凄いな。ココまであざといと思いながらも楽しく読めてしまえるあたり恐ろしい本だ。シリーズもののようだし続編もお風呂本の候補にあげよう。

とはいえひとりの人物にあらゆる性格を詰め込んでキャラクタ化してしまうというのは作品の普遍性を奪い取る。この作品はエンタメであはるかもしれないけれど、「物語」にはなり得ないと感じた。