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Usotsuki Online

Do you believe in the magic of make-believe ?

SDIM1469

三連休。何の予定も無いのでのんびり過ごした。掃除をしたり洗濯したりアイロンがけしたり。温かい煮込み料理が食べたくなったので夕食は野菜の味噌煮込みにした。夏は手抜きでインスタントのほんだしを使うことが多いけど、冬はきちんと出汁を取ることが増える。やっぱりきちんと出汁をとると美味しい。

Kindle Paperwhite ではじめて本を読んでみたのだけど、読書体験としてはあまり良いものとは言えなかった。少なくとも僕のように小説に没入するタイプの人には向かないと感じた。ハードウェア・ソフトウェアの両面ともにあらゆる点で読書体験が阻害される。特にソフトウェアの出来が酷い。読者が満足出来る読書体験を提供出来るようになるにはまだまだ時間がかかるかなという感じがした。真に良い読書体験を提供するにはハードウェアもソフトウェアもより透過的な存在にならなければならず、しかし透過性はそれらの緻密なまでの作り込みによって初めて得られるものであるというところがソフトウェアの面白いところだなーと思うのだけど、Amazon にそれが出来るかは甚だ疑問だ。

最近読んだ本。

Release It! 本番用ソフトウェア製品の設計とデプロイのために

Release It! 本番用ソフトウェア製品の設計とデプロイのために

大傑作だった。読み物としても実用的な技術書としても非常に面白くここ数年読んだ技術書の中では間違いなくベストと言わざるを得ない。ずっと積ん読にしていてスミマセンでしたと謝りたい。著者の遭遇した障害をパターン化・カタログ化して実例を交えて紹介しているのだけど、この実例が非常に面白い。続編が望まれる。

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る

直木賞受賞作。つまらなかった。これで直木賞をとっちゃうのは辻村深月が可哀相だと思う。これで受賞させるぐらいなら前回候補作の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』で受賞させてあげてほしかった。あちらの方がまだ数段面白い。とはいえ最近の彼女の作品はただ「書いている」だけに思えて以前の作品ほどのエンタメとしての面白さが無いのでそろそろブレイクスルーしてほしい。

花嫁

花嫁

(個人的に)綿矢りさ・朝吹真理子と並んで今もっともアツい女流作家・青山七恵である。彼女の作品は本当に良い。何が素晴らしいって作を重ねるごとにどんどん成長していることが感じられるのが良い。一読者として単純に嬉しくなる。それこそが現代作家の作品を読み続ける醍醐味のひとつなわけだけど、彼女ほど猛烈な勢いで成長している作家はちょっと他に見当たらない。たとえば一時期の桜庭一樹なんかは凄かったけど、『ファミリー・ポートレイト』あたりから少し足踏みをしている感じがする。ところが青山七恵は違うのだ。次々と新しい世界を切り拓き小説世界をどんどん拡げている。最近では何やら貫禄すら漂う作品の濃厚さである。で、今作も面白かった!傑作『わたしの彼氏』と同じ路線でユーモラス。例えばブラザーコンプレックスを抱く妹が、兄が結婚することを知って落ち込んでいることを相談する家族。

「ブラザーコンプレックスっていうやつだろう……」

 うん、と俺はうなずく。

「結婚するってだけでも悲惨なところ……」

 俺の相槌はうんともううんともつかなくなってくる。

「お前が富子ちゃんなんかをなんの予告もなく連れてくるから、相当参っちゃってるみたいなんだよな」

「やっぱり俺、事前になんか言っとくべきだったかな。みんながびっくりするような人を連れてくるよりは」

「そうだ、それぐらい言ってしかるべきだ。お前の過失だよ。だからどうにかしてくれ」

「どうにかしろって父さん、どうしたらいいんだよ」

「あいつ毎日ご飯もパンも食わずに大福ばっかり食ってるんだぞ。このままいったら深刻じゃないか。お前、あれ、やめさせろ」

「でもたぶん、そういうのは俺じゃなくて、母さんの役目だろう」

 俺が水を向けると、母さんはハキハキ喋りだす。

「お母さんが何言ったってもう無駄よ。言うには言ったのよ、お兄ちゃんの人生なんだから、お兄ちゃんが最良だと思う方向に進むのを応援してあげましょうって。でも麻紀は、それとこれとは関係ない、これは罰なんだって言って……」

「な、罰だと言って大福を食べるなんておかしいじゃないか。それこそ罰あたりだ。大福は罰として食べるもんじゃないだろ、ふつう反対だろ。大福は褒美だろ。麻紀はへんなんだよ」

なんともおかしみに溢れた会話だ。最近の青山七恵は少し小説の描き方を変えてるけれど、この路線で書き続けたらもっと人気が出る気がする。『魔法使いクラブ』や『かけら』的な路線も好きだけど、今こんな作品が描ける人は少ない。

『わたしの彼氏』も相当に面白かったけど『花嫁』はそれ以上に面白かった。一家族のそれぞれが主人公であり魅力溢れるキャラクタである点が大きい。特に麻紀は強烈に魅力のあるキャラクタとして描かれている。

「好きな男の子? いない。くだらない恋はもうしないって、あたし決めたんだ。だから次にするとしたら、直感でする、本気の恋よ。この人だって人が現れたらあたらしはすぐに行動するの。憎らしさが生まれる前に、四の五の言わずに、全力でその人を世界じゅうから奪ってやるの」

この台詞は彼女の父親を大きく動揺させる一言でもあるのだけどそれはさておき。本作は彼等の他愛ない家族愛の群像劇かと思ったらそうではない。彼等はそれぞれに「ふつう」ではない人々なのだ。読み進めるごとに現れる意外な展開が決して読者を飽きさせない。作品のあらゆるところにユーモアが満ちているが、それだけでなくときどきハッとするような生々しい描写が現れる。ユーモアの中に「ありえるかもしれない」現実を紛れ込ませ、日常のなかに生まれた歪さを中心として大きな物語をつくる。犯してしまった過ち、逃れられない運命。しかしそこに愛があり生きる人々の力強さが充ち満ちている。青山七恵の最高傑作だ。