Usotsuki Online

Do you believe in the magic of make-believe ?

SDIM0486

思い立って仕事を休んだ。勉強したり考え事をしたり。

比較的クリエイティブな人に憧れがあって、何故かというと単純に「カッコイイ」と思うからなのだけど、高校生ぐらいの頃にバイトでホームページを作ったり CD ジャケットをつくったり CG を描いたり音楽を作ったりしているときにふと「自分が作っているものは《自分がカッコイイと思うもの》のイミテーション/組み合わせに過ぎないんじゃないか」「人に要求された枠組みのなかで物事を表現するのは果たしてクリエイティブな行為なのか」などと思い、枠組みそれ自体を破壊していける同年代のクリエイターに嫉妬やら羨望やらを抱いていたような気がする。結局色々あって普通の仕事をしているわけだけど、この歳になってもクリエイティブな人達に憧れているのは諦め悪いよなぁと思わずにはいられない。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

グレッグ・イーガン『祈りの海』を読んだ。アイデンティティがひとつのテーマとなった短編集。「自己とは何か」を突き詰めていくのは今世紀以降の SF のひとつの大きな潮流ではあるけれど、イーガンはその端緒になったのかどうかを僕は知らない。作品もそれほど読んだことがあるわけでもない。余りにも如才なく纏まりすぎている点が好みではないのかもしれない。この作品も『ぼくになることを』『イェユーカ』『祈りの海』などはそこそこ面白いと思ったけど些か小綺麗に纏まり過ぎていてカタルシスが足りない気がする。『ぼくになることを』が古臭く今ひとつに思えるのは(書かれてから 10 年以上経過しているという点を差し引いても)アイデンティティというテーマを扱っているにも関わらず、そこに在る《ぼく》が余りにも希薄で《ぼく》の物語として読むことが出来ないために思える。長谷敏司が『あなたのための物語』で書いたような、肉体的な実感や懊悩が不足しているように思える。頭が良過ぎるのだ。SF 的ガジェットや設定の奇想天外さだけ見ても確かにイーガンは凄い作家だと思うのだけど、『イェユーカ』はテーマと設定が協調しているようには思えず、例えば伊藤計劃がエンタメに徹して書いていたらもっと面白くなったんじゃないかと思うし、『祈りの海』をテッド・チャンが描いていれば一段違った面白さになったんじゃないかと思う。やっぱり今ひとつ好みに合わない。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

ついでに言っておくと僕の SF オールタイムベストはテッド・チャン『あなたの人生の物語』です。