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Do you believe in the magic of make-believe ?

24 時退社。遅くまで残っている割に余り働いた気がしないのは何故だろう。集中力に欠けているように思える。明確なゴールを決めずに一日過ごしてしまうと良くない。「思ったより進んだな」という達成感も得られないし、「大丈夫そうだな」という見積もりも曖昧模糊なものになってしまう。特に前者の方が重要で、定石だけど先の長いタスクは小さなタスクに分解してひとつずつ達成感を味わえるようにした方が良い。

わたしがいなかった街で

わたしがいなかった街で

昨夜は帰宅してから柴崎友香『わたしがいなかった街で』を読み終えて非常に興奮していた。控えめに言って大変面白く傑作と言って良い。柴崎友香の描くテーマは果たして「文学」である必要があるのかとずっと思っていたのだけど、彼女がこれほど内省的な作品を描くとは信じられない気持ちだった。2010 年という舞台設定も明らかに恣意的で、作品の背後には明白に震災の影響があると思う。事あるごとに過去の記録を見返しては自らの存在を確認せずにはいられないという砂羽の行動は、「わたしがいない」世界を考えていなかったという態度に対する批判のようにも思えるし、半ば主観的世界から飛び出しながらも彼女の足下は常に揺さぶられ続けており、世界内存在としての自己を如何に了解すれば良いのかという不安は尽きることが無い。一方で過去の経験から未来に希望を見出すことが出来ずに居た葛井夏は、ある日バスの車窓から見た光景に「わたしのいなかった」人生を想い、しかし例え「わたしがいなかった」としてもそれに触れることが出来る、もしかすると自らもそこに至ることが出来るかもしれないという希望を持つ。このように砂羽と夏という異なる世代の登場人物を立てて世代間の差異を描き出しつつ、その背後では現代社会に対する種々の問題提起もなされている。僕らが「日常」だと思っていた風景とは何だったのか、その儚さや唯一性を僕らは如何に軽視してきたのか。今でも目の前の「日常」にしか目を向けず、傍らで喪われてゆくものから目を背けているのではないか。通俗的で下らない言葉に耳を傾けている暇があれば「今」ここで自らの在り方を問うべきではないか。なんてことが描かれているようにも感じられ、多様な受け取り方が出来る懐の深い作品になっている。おすすめ。